Sound Horizon『Moira』の《詩女神六姉妹》と教会旋法

先日買ってきたSound Horizonの《Moira》がオリコンデイリーランキングで1位になっていたようだ。売り上げ等の詳細は、ここ等を参考にしてほしい。これまで売れるCDというのは、人気歌手・アイドルの歌や、TVドラマとかの主題歌ばかりで、似たような音楽ばかりという印象があった。それだけに、このいわゆるポピュラー音楽とはひと味もふた味も違うSound Horizonの音楽が売れているというのは意外だった。もちろん言うまでもないことだが、筆者はこの現象を肯定的にとらえようと思っている。

ここで、Sound Horizonの魅力について語ってもいいのだが、それはここなんかでも活発に行われていると思われるので、一旦割愛としておこう。

さて、ここから本題に入る。《Moira》の3曲目「神話」の3分過ぎから、《詩女神六姉妹》の登場(紹介?)の場面がある。名前とともに短いメロディを歌詞なしで歌うのだが、この名前とメロディに関連があることを発見した。

名前は長女から、イオニア、ドリア、フリギア、リディア、エオリア、ロクリアだが、この名前は全てクラシック音楽教会旋法に対応するものがある。イオニア旋法、ドリア旋法、フリギア旋法、リディア旋法、エオリア旋法、ロクリア旋法がそれだ。そして、この「神話」で《詩女神六姉妹》が一人ずつソロで歌う場面、たった8小節ずつのことだが、イオニアの歌はイオニア旋法で、ドリアの歌はドリア旋法で……といったようにそれぞれその名前の旋法で歌われている。

もう少し説明すると、

イオニアの歌の構成音を、低い方からドイツ語音名で音階に並べると、C,D,E,F,G,A,H,C,D,Eとなり、これはCを終止音するイオニア旋法と考えられる。
同様にドリアの歌は、G,A,H,C,D,E,F,G,Aで、Dを終止音とするドリア旋法、
フリギアの歌は、E,F,G,A,H,C,D,Eで、Eを終止音とするフリギア旋法、
リディアの歌は、C,D,E,Fis,G,Aで、Cを終止音とするリディア旋法、
エオリアの歌は、D,E,F,G,A,H,C,D,E,Fで、Aを終止音とするエオリア旋法、
ロクリアの歌は、H,C,D,E,F,G,A,Hで、Hを終止音とするロクリア旋法だ。

このように、作品の細かい部分にまできちんと考えられて作られている。これはSound Horizon作品の醍醐味と言えるだろう。